トップメッセージ
平素は格別のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。
当社グループ(当社および子会社)の需要先である建設業界では、公共事業については、「国土強靭化」や「防災・減災」「維持・補修」などの重点施策への予算配分を背景に堅調に推移しました。一方、民間建設投資については、住宅市場における2024年の新設住宅着工戸数が昨年に引続き減少したものの、企業の設備投資意欲の回復や建設需要の増加などにより好調に推移しました。
このような状況のもと、当社グループ(当社および子会社)は、販売部門においては、提案営業を担当する営業推進部の体制を強化・再編の上、開発・設計部門や生産部門などの関連部署とも連携しながら、役所や建設コンサルタントに向けて当社プレキャストコンクリート製品のもつ優れた機能性を訴求し、受注の獲得に努めてまいりました。また、3次元データ等のデジタル技術を駆使し、高付加価値製品の拡販や難易度の高い特注物件の受注に注力するとともに、港湾事業や民間の大型造成事業などへのアプローチも鋭意推し進めてまいりました。加えて、原材料価格高騰分の販売価格への転嫁にも注力いたしました。一方、生産部門においては、原材料価格や物流コスト高騰への対策として、製造品目の再配置などの施策により生産性の向上を一層推進し、協力会社との連携も強化しながら原価の低減や配送の効率化に取組むなど、グループ一丸となって収益の確保に努めたものの、一部の工場において、生産設備の老朽化に起因する問題も顕在化いたしました。なお、サステナビリティへの取組みについては、組織横断的にサステナビリティを推進する「サステナビリティ推進委員会」が中心となり、取締役会とも連携しながらグループ全体のESG経営の実現に向けた取組みを推し進めたほか、低炭素型コンクリート「Necoコンクリート®」を用いた製品の製造・販売にも注力いたしました。
今後のわが国の経済情勢は、緩やかな回復基調が続くと予想されるものの、米中の通商政策に起因する国際経済への影響が懸念されるほか、原材料価格やエネルギー価格の高騰が持続するなど、引続き不透明な状況で推移するものと予想されます。一方、当社グループの需要先である建設業界においては、「国土強靭化」や「維持・補修」「防災・減災」「流域治水」などの重点テーマを軸に、官需、民需ともに引続き堅調に推移するものと見込まれます。
このような状況のなか、当社グループは、中長期経営計画(Nikko Revolution Towards 2033)に基づき、「美しく豊かな環境作りを通じてサステナビリティ実現に貢献する日本興業グループ」を基本方針に掲げ、2025年度から2027年度の3か年を第1フェーズとした経営計画の実現に向けて鋭意取組んでまいります。具体的には、収益力の向上と成果の適正配分の両立を目指す「グループ成長戦略」、サステナビリティへの取組みを加速化させるための「サステナビリティ取組強化戦略」、ウェルビーイングの推進を目指す「人的資本活性化戦略」、そしてこれらの戦略を推し進めるための「経営基盤強化戦略」、以上4つの戦略に基づき、持続的成長による企業価値の向上を目指してまいります。
第1フェーズの初年度に当たる2025年度は、国や地方の進める重点施策や建設現場の生産性向上へのソリューションとして、プレキャスト化のメリットをユーザーに訴求しながら地域の需要や特性に応じた提案を推し進めるとともに、当社オリジナルのカスタマイズ技術を駆使した高付加価値の製品・工法の開発と拡販に注力し、シェアおよび収益の拡大を図ってまいります。また、港湾を始め、空港や防衛施設に向けた製品・素材開発を推し進めるなど、新規事業領域の拡大を図っていくとともに、需要ボリュームの大きい関東地区でのさらなる事業拡大や、連結子会社の葉月工業株式会社を起点とした九州地区での事業展開など、エリア戦略も着実に遂行しながら成長戦略を強力に推し進めてまいります。加えて、生産部門においては、老朽化した生産設備の更新を早急に進め、生産効率の向上によるコスト低減を図るとともに、あらゆる部門が、原材料価格高騰分の販売価格への適正な転嫁や物流合理化、管理強化と生産性向上に取組むことで、利益の創出を図ってまいります。
サステナビリティへの取組みについては、「サステナビリティ推進委員会」が中心となり、ESG経営の実現に向けた取組みを加速化させてまいります。特に、E(環境)については、昨年上市した低炭素型コンクリート「Necoコンクリート®」を始めとする脱炭素型製品の開発・生産・販売を始め、再生可能エネルギーの採用やブルーカーボンへの取組み等を推し進め、2040年までのカーボンニュートラル実現に向けて鋭意取組んでまいります。
また、当社は人的資本の活性化がグループ全体の持続的成長に不可欠であると認識しており、社員一人ひとりの成長を組織の成長と結びつけることでエンゲージメントの向上を推し進めるべく、教育・研修の充実や健康経営への取組み強化等を通じて、グループ全体のウェルビーイングの実現を目指してまいります。
一方、東京証券取引所より要請の「資本コストと株価を意識した経営の実現に向けた対応」についても重要な経営課題のひとつと位置づけ、中長期経営計画における成長戦略に基づき持続的に収益性を高めていくとともに、資本政策の基本方針に基づき株主還元の充実を進める一方、IRの拡充とガバナンス強化を図ることで、ROE(自己資本利益率)およびPBR(株価純資産倍率)の向上に努めてまいります。また、企業提携基本契約を締結中の積水樹脂株式会社との関係も、経営の独立性は維持しつつも、お互いの事業上の強みを活かしながらパートナーシップの強化を図り、企業グループ全体の成長に寄与してまいります。
以上のような施策を当社グループが一丸となって取組むことで、中長期的な企業価値向上と持続的成長を図りながら、経営理念である「美しく豊かな環境づくり」の実現に向けて鋭意挑戦してまいります。
株主の皆様におかれましては、なにとぞ格別のご理解をいただき、今後ともより一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
2025年6月